理事長メッセージ ~創立30周年を迎えて
昨年より、伊藤雅俊に代わり理事長を務めております、山本尚子でございます。
私の父、伊藤雅俊は戦中戦後の厳しい時代と環境の中、母と兄の支援で自らも勉強する機会を得て、その後多くの皆様とのご縁をいただき、大きなビジネスを成し遂げました。1994年、父が70歳で古希を迎える時、そのご恩を少しでも皆様にお返ししたいとこの伊藤謝恩育英財団を設立、今年で30周年になりました。
父の100歳の誕生日と財団30周年を同時に迎えたいとの願いは叶わず、昨年3月に父は98歳で亡くなりました。そこで今回の創立30周年記念式典では、父の生誕100年も皆様とご一緒にお祝いしたいと考え、「伊藤雅俊生誕100年」の動画を流し、共に偲んでいただきました。
私自身は2000年より財団の実務に関わっており、「財団の母」のつもりで奨学生に接して、早25年目になりました。
振り返りますと、当財団はこの30年の歩みの結果、延べ1200名余りの研究者ならびに奨学生を支援し、多くの優秀な人材が様々な分野で社会に貢献、活躍されています。今回の記念式典では、記念の集い(懇親会)に先立ち、財団OB・OGと現役奨学生の交流の活性化を目的として、「新しい繋がり(ご縁)を育む会」を開催いたしました。大変多くのOB・OGの「後輩奨学生を支援したい」との思いから実現した会であり、こうしたご縁のつながり、ご縁を大切にする思いこそが、伊藤謝恩育英財団の特徴であり「財産」なのだと思っております。
世の中の動きは激しく、大学や大学院の形態も様々に変化しております。大学学部と大学院修士を併せて5年制の学部の設立など、更に多様化する中において、当財団も時代の行く先を見極め、これまで奨学生の皆さんと築いてきた良き伝統を守りつつ、時代にあった変革を行っていく所存でございます。
私たちは、教育が未来を築く最も重要な柱の一つであると信じております。
昨今、世界におきましては、ウクライナ、パレスチナ、その他にもスーダン内戦など、胸が痛むような報道が続いております。暴力や戦争の無い世界的な平和が来ることを願っておりますが、その実現のために必要なのは軍事などの力ではなく、高い知性「知の力」だと信じておりますし、そのための学びを今後も末永く支援していく所存でございます。
これまで財団の活動にご理解とご協力を賜りました皆様、当財団がこれまで支援してきたすべての研究者・奨学生に、改めて心から感謝申し上げます。
財団創立30周年記念式典がこれまでの歩みを振り返るとともに、未来への一歩を踏み出す重要な契機となることを願っております。
今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
公益財団法人 伊藤謝恩育英財団 理事長 山本尚子